JSM Travel Award
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「Discovery of a first-in-class MMSET inhibitor for t(4;14)-positive multiple myeloma.」
自治医科大学 松岡 紗恵 先生
第21回国際骨髄腫学会(IMW)参加報告書
自治医科大学 分子病態治療研究センター 領域融合治療研究部
松岡紗恵
この度は、上記の賞を拝受し、2024年9月25~28日にブラジル リオデジャネイロにて開催された第21回国際骨髄腫学会(IMW)に参加させていただくことができました。
ブラジルはBRICS加盟国の中心メンバーであり、現在非常に勢いのある国ということで、現地参加を楽しみにしておりました。
日本からの直行便はなく、片道27時間の長旅でありましたが、リオデジャネイロ国際ガレオン空港に降り立った途端に現地の人々の陽気さとエネルギーに圧倒され、疲労感も吹き飛んでしまいました。
距離の影響か日本からの参加者は少なかったのですが、アメリカやヨーロッパからの参加者で学会初日から大変な賑わいでした。
初日の午後は看護学の専門家の方々のご発表も多く、コメディカルスタッフとともにfrailty対策を講じなければいけない骨髄腫の疾患特性を再認識させられました。
今後患者さんにより良い医療を提供するためには、日本でもpractical nurseの育成・導入にいっそう注力していく必要があると思いました。
アメリカではCAR-T治療がもはやスタンダードになっていることもあり、基礎・臨床セッションともにBCMAやCAR-Tについての演題は多く出されていました。
コストや人的資源の問題で本邦ではなかなかシェアが拡大しない治療法ではありますが、世界のエキスパートから直にその有効性・治療成績のエビデンスを聴講し、本邦なりに現場に定着させていく方法を考えなければならないと改めて実感いたしました。
個人的には、genomic informationに基づくハイリスクMMについての新たなコンセンサスが本学会で提唱されるのを心待ちにしていたため、学会2日目のプレナリーセッションでJill CORRE先生のご講演を生で拝聴できたことはありがたかったです。かつてハイリスク染色体に分類されていたものも、新分類では単独ではハイリスクの定義からは外されており、特定の染色体異常に対する新規治療薬開発等もどんどん複雑になっていくことが想定されます。自分のリサーチが最新の知見にも対応できているかどうか日々考察しなければならないと、僭越ながら感じました。
今回はIMWからYoung Investigator Awardに選出していただけたこともあり、3日目夜の表彰式兼アフターパーティーでは世界各国の他の受賞者の方々や先生方と交流することができ、夢のようなひと時を過ごすことができました。毎年excitingなことで有名なIMWのパーティーですが、今回はリオのカーニバルがコンセプトとなっており、プロのダンサーたちの華麗な舞を鑑賞できるのはもちろんのこと、参加者用のお面や被り物・衣装も用意されており、Philippe Moreau会長をはじめ数多くのご高名な先生方も積極的に仮装を楽しんでおられました。
そのようなリオの魔法に助けられ、日頃は畏れ多くてお声かけできないような先生方にもご挨拶させていただくことができました。また、海外の同年代の研究者たちが、今すぐにでもPIとして活躍できるのではないかというレベルで研究の話をするのを見て大きな刺激を受けました。
このような臨場感・感動を肌で感じることこそが国際学会の醍醐味であると思いました。
今回の学会で受けた感銘・数々の出会いを励みに、今後よりいっそう精進してまいります。
最後になりますが、このような貴重な経験をさせていただいた、日本骨髄腫学会理事会・事務局の皆様、日頃よりご指導賜っている仲宗根秀樹教授・古川雄祐先生をはじめ共同研究者の先生方、関係者の方々に心より感謝申し上げます。